今月の推薦図書

フェルマーの最終定理

「自然数n≧3のとき、X+Y=Zを満たす自然数X,Y,Zは存在しない(X,Y,Z≠0)」という命題が「フェルマーの最終定理」です。フェルマーは17世紀の天才数学者で、「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」と書き残し1665年に世を去りました。それから360年間、数多くの数学者が悪戦苦闘を繰り返し、1995年イギリスの数学者アンドリュー・ワイルズによってこの命題は証明されました。
私が高校生の時、思い出に残る授業があります。それはピタゴラスの定理を証明する授業で、最後に先生が「Xn+Yn=Zn」という数式を板書しました。そして「nが3以上の自然数の場合、この式を満たす自然数X,Y,Zは存在するか?」と発問しました。続けて「nが3以上の場合、自然数X,Y,Zは存在しないんだ!! フェルマーの定理といって、この証明は数学の難問中の難問。これを証明したらノーベル賞!! ボクはこれを研究しているんだ!!」と力説していました。高校を卒業して30年、書店で今回おすすめするサイモン・シン著『フェルマーの最終定理』という本を見つけた時、思わず本を手にしてページをめくっていました。この本は、この悪魔の命題に取りつかれた数学者の葛藤の記録で、数学的な知識が無くても読めます。読み始めると近代の代表的な数学者オイラーやゲーテルなども紹介されていて近代数学史としても楽しめます。壮大な歴史時代小説と思って読んでみてください。

推薦者 事務長 吉田 英雄

出版社新潮文庫