今月の推薦図書

武士道

武士道とは、世にまだ武士がいた時代に彼らが自分たちに課した「生き方のルールや心得」のことです。新渡戸稲造著『武士道』はかつて世界陸上で活躍した為末大選手(400mハードル)の愛読書で、陸上に力を注いでいた私は半ば当然のように感化され、この本を手に取りました。為末は日本人が不利だとされる競技で、なおかつ国内でも小柄な体格でありながら、それをものともせず世界陸上で日本人初のメダリストとなった選手です。当時私はまだ高校生でしたが、その反骨精神を目の当たりにしたとき、まさしくサムライだなと鳥肌が立ちました。陸上選手に限らず、野球選手のイチローや世界で活躍する日本人の強さを作るものはきっと日本人にしかない気質や信条からなる精神力なのかなと感じます。「命より大事なものがある」と考える人は恐ろしく強くなれると感じることがありますが、このような武士道の考え方は宗教的なものとは違った気高さを感じます。高校生にとってはとっつきにくい硬いイメージの本かもしれませんが、この本は倫理観・道徳観を改めて考えさせてくれるだけでなく、日本人である誇りを教えてくれる格好の書です。少しでも心に響く〝何か〟を感じとって読んでもらいたい一冊です。

推薦者 図書部 佐藤 優実 先生

出版社三笠書房