今月の推薦図書

戦艦大和ノ最期

今月のおすすめ本は吉田満『戦艦大和ノ最期』講談社文芸文庫です。第二次世界大戦が終結して今年は70年を数えます。この大戦では多くの本校OBの命も失われました。五月の学校行事「安全と平和を祈る日」では、全教職員と生徒で戦争の悲惨さと命と家族の大切さを深く考え、英霊に対し哀悼の意を捧げております。さて本書は、乗組員であった吉田少尉の眼を通して、当時世界最大で日本の造船技術の粋を集めた戦艦大和が、沖縄防衛の為に水上特攻部隊として出撃し、アメリカ軍機との戦いで奮戦空しく東シナ海で沈没する様子を描いたものです。著者は、戦後すぐに書き著されたことから現代とは違う評価に洗われながらも、生きることの大切さ、戦争の悲惨さを丁寧に表しています。文中では「進歩のないものは決して勝たない。負けて目覚めることが最上の道だ。日本は進歩ということを軽んじ過ぎた」と喝破しています。本書は、文語体で書かれていて歴史的背景への理解不足も多く考えられるため、諸君にとっては読みやすく、楽しめる本ではないかもしれません。しかし今、選挙権が18歳に引き下げられようとするときに、皆さんの祖父以上の世代が遭遇した戦争の一面を垣間見ることで、憲法改正論や世界の安全保障を深く考察するのに相応しい一冊であると考え推薦します。

 

理事長・校長 西村 清 先生

出版社講談社