今月の推薦図書

ありがとうは僕の耳にこだまする

今回私が推薦する本は、東田直樹著『ありがとうは僕の耳にこだまするという詩集です。著者である東田直樹さんは、重度の自閉症で会話をすることができません。しかし、この詩集にあふれる言葉、表現の豊かさに心が温かくなります。私が千葉黎明高校で教員をする前、今から20年くらい前でしょうか。小学校にある特別支援学級の支援員という仕事をしていたことがあります。そこで出会った特別支援学級の担任の先生の言葉が今でも私の教員としての根っこになっています。その先生の言葉は「子ども(児童)のありのままをみてください」でした。この言葉の意味は、障がいがあるというフィルターを通してではなく、目の前にいるその子ども(児童)そのままを、ありのままをみてください、かかわってくださいということです。彼の作品を読み、そのことを再確認しました。東田直樹さんの著作は他にも、13歳の時に執筆した『自閉症の僕が跳びはねる理由』(この本は翻訳されイギリス、アメリカ、カナダでもベストセラーになっています)、『風になる』など多数あります。また、彼は自ら声を発して会話をすることはできませんが、パソコンや文字盤ポインティングの音声によって援助なしで会話をすることができ、日本全国各地で講演会を行っています。詩集のあとがきに「言葉に隠された秘密は、みんなが知りたいことではないでしょうか。この本が、その答えを見つける手助けになれば幸いです」とあります。ぜひ彼の言葉に出会って、いろいろなことを考えてみてください。

推薦者 図書部 佐藤 聖子先生

出版社角川学芸出版