今月の推薦図書

記憶屋

今月の図書部のおすすめ本は、織守きょうや著『記憶屋』(角川ホラー文庫)です。怪人系の都市伝説として語り継がれている「記憶屋」。消したい記憶を食べること、それは正義なのか、悪なのか。記憶は思い出であり、全ては過去です。自然に忘れてしまうこともあれば、忘れてしまいたい記憶ほど鮮明に覚えていたりもします。自分一人だけの記憶であると考える人もいれば、その中に存在した人、つまり時間を共有した人たちと形作ったものだと考える人もいるでしょう。そんな記憶に関するお話で、忘れてしまった側、忘れ去られてしまった側、そして「記憶屋」のそれぞれの苦悩がホラーというよりはミステリーに近い物語で描かれています。読書の秋ということで、たまにはこういった作品に手を出してみてはどうでしょう。

推薦者  図書部  岩井 沙都美先生

出版社角川ホラー文庫