理事長コラム

絆から結びへ-東北の修学旅行を終えて-

7/25「東北教育旅行セミナー」にて本校の東北修学旅行事例発表

阪神淡路大震災からわずか十数年で東日本大震災が日本を襲いました。日本は自然と向き合い、自然を受け入れることで、それに挑戦する科学技術を磨き、あるいは防災教育のありかたに大きな関心と努力を重ねてきました。今回の被災地訪問を含む修学旅行の実施にあたってはいろいろな考え方や言葉がありました。その中で震災後わずか12日後に開催された選抜高等学校野球大会での選手宣誓は忘れることの出来ない言葉のひとつでした。

「宣誓。私たちは阪神淡路大震災の年に生まれました。今、東日本大震災で多くの尊い命が奪われ、私たちの心は悲しみでいっぱいです。被災地ではすべての方々が一丸となり仲間と共に頑張っておられます。人は仲間に支えられることで大きな困難を乗り越えることができる、と信じています。私たちに今できること。それはこの大会を精一杯、元気を出して戦うことです。がんばろう日本!生かされている命に感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います。平成23年3月23日 創志学園高等学校野球部主将 野山慎介」

私は高校、大学、社会人、日本代表と野球に関わった一人としてという部分を差し引いても、この宣誓文から命に対する尊厳、若者らしい清々しさ、そしていまでも大事な日本人としての心構えが見事に要約されており、勇気づけられたことを鮮明に覚えています。

また、この年は高校生にとって最大のスポーツ大会である全国高等学校総合体育大会が北東北で開催されました。本校からは陸上競技部とアーチェリー部が出場しましたので、私は恒例でもある激励を兼ねて青森県八戸市に向かい、その足で被災地を訪ねました。岩手県久慈市へ向かう国道や沿岸部を一人で移動し、その惨状を目にして言葉では言い表すことのできない衝撃を覚えました。またその夏には軽音楽部が地元の震災支援チャリティーコンサートに参加し、そこで塩釜市で震災ボランティア活動をされている相澤さんと運命的な出会いを得ることが出来ました。さらに年末には千葉県私立学校の理事長・校長20名と仙台、東松島・石巻を訪問いたしました。こうして高校生、生徒達がそれぞれ絆を運んでくれたことが、学校長と共に修学旅行を東北で実施する大きな動機になったことは間違いありません。

最後になりますが、実際に被災地を訪問し、傾聴ボランティアで伺ったところでは「絆だけではだめなんです。ぜひ絆をさらに糸へんで結んでください。絆から結びへ。」と教えていただきました。私はこのことをさらに深く胸に刻み、度あるごとに「絆から結びへ」と申し上げております。

千葉黎明高校は昨年90周年を迎えました。関東大震災の年に創立した本校が将来を考える時、東北の奮闘やあたたかさ、そして世界のご支援に笑顔で心から感謝することのできる若者の出現に期待することとその指導を行うことが私たち世代の努めであると考えます。

今後ともどうぞよろしくご指導願います。

 

東北教育旅行セミナー_01       東北教育旅行セミナー_02

平成25年7月25日 グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて