今月の推薦図書

たった一人の30年戦争

今年の1月16日に小野田寛郎さんが亡くなったことがニュースになっていましたね。小野田寛郎さんをご存じですか?元陸軍少尉の小野田さんは、日本の敗戦を知らず終戦後およそ30年にも渡ってフィリピン・ルバング島で任務を続行していました。ルバング島上空からヘリコプターで「小野田さーん!戦争は終わりましたよー!」と呼び掛けている当時のニュース映像がよく知られています。今回紹介する本、小野田寛郎著『たった一人の30年戦争』は、30年にも渡るジャングルでの孤独なサバイバル、帰国後に見た変わり過ぎた戦後日本への戸惑い、小野田さんの壮絶な人生が小野田さん自身によって描かれた自伝です。小野田さんは帰国後の会見で「戦前は命を惜しむなと教えられた、戦後命を惜しまなければならない時代になっていた」と言っています。それはとてもよい時代ですが、「死を意識しないで、生きることをおろそかにしてしまってはいないか?」とも問いかけています。平和な今の日本に生きる幸せな私たちが忘れかけている、「命がけで生きる」「必死で生きる」ということについて考えさせられる一冊です。

出版社東京新聞出版局