今月の推薦図書

「立ち上がれ日本人」:マハティール・モハマド、 加藤暁子(訳)

今、日本は欧米の価値観に振り回され、日本の古き良き心や習慣を忘れ去っています。

そのことを思い出させてくれたのが東日本大震災の時でした。日本人の生真面目さ、助け合い、周囲を気遣う優しい心がいたるところで見られ、世界中から称賛を浴びました。しかし、それも束の間ではなかったでしょうか?現実は、またもや欧米から押し付けられた「個人主義」が頭を持ち上げ、自己中心主義的な現代日本に戻っています。

戦後間もない頃までは日本の再建に尽くそうという“公”の精神が残っていました。しかし今や、公立の学校では「日本人としての誇り」とか「日本という国を愛すること」を教えてはいません。日本のマスコミですら日本国民が国を愛することを許さない論調に満ちています。何故、こんな国になったのでしょう?

本書の著者はマレーシアの首相を20年以上も続け、同国をアジアの経済立国として築き上げ「哲人宰相」と呼ばれたマハティール氏です。彼が日本人に贈ったエールの言葉が『日本人よ誇りを持て』でした。彼は「ルック・イースト政策」(東方政策)を国策としました。その「イースト」とは「日本」そのものだったのです。彼は、マレーシアだけでなくアジアのほとんどの国々は“いつも日本に憧れていた”、そして“いつも日本に学ぼうとしていた”と書いているのです。

彼は2002年11月にマレーシアを修学旅行で訪れた「東京都立国際高校」の生徒達に、同じ内容のスピーチをしてくれたそうです。「あなた達は日本人であることに誇りを持ちなさい」と。それを聞いた茶髪の生徒達ですら「こんなことを言ってくれる先生も政治家もいなかった」と感激し、泣きながら握手を求める生徒達が続出したそうです。

「国を愛する」という意味を曲解することなく、この本から素直に感じ取ってくれることを願っています。

出版社新潮社(新潮新書)